REM - ! - 1雪19話
地球塔200階には、二人だけで残った1号と雪の姿があった。
自己再生の為眠る1号。
傍らでその姿を見つめる雪。
ふと1号が覚醒しゆっくりと目を開ける。
雪はとても複雑そうな顔をしていた。
(そんな顔でオレを見ることはない…)
目に入る雪の表情に、1号は口を開く。
「オレは雪のことを恨んでいない」
雪は「当然だ!」などと悪態を付くでもなく1号のそばに顔を近づける。
1号は雪の左胸に残った傷跡に指先を伸ばし、触れた。
「お互い様って事か?」
「いや、ちがう
おまえはわざとオレを撃ったんじゃない
オレは、おまえを、おまえ達を恨んでいた
でもそれは間違っていた
許せとは言わない」
「おい、無理に動こうとするな
いいから、早く回復しろ」
つっけんどんな雪の物言いに、1号は優しく微かに笑む。
今度は雪の顔に手を伸ばす。
「雪の顔を見ていたい
もっと近くに来て、よく見せてくれ」
雪は1号の望みに素直に応えて、傍らに膝をつき屈み込む。
1号は雪の頬や目元に指先を滑らせた。
(たとえ姿が変わっても、雪は雪だから
でも
初めての仲間と思えた、今の雪の姿を
この目に焼き付けておきたい…)
肌の上を辿る、力無い指先に雪はひとつの決意をした。
(今の俺の身体も大分まずいが、この一月、
俺は1号のことを守ろう)
波の様に襲い来ては引いていく痛みの薄れた、ごく僅かな時間の出来事だった。