REM - ! - 雪1ホテル





 地球塔の一角に作られた、周囲の雰囲気をあっさりと無視した建造物、ラブホテル。
 誰が建てたか、一晩でどんなに疲労した身体も全快になるということで客足が絶えることはない。
 今夜の客は戦闘の中に身を置き続ける戦士が二人・・・

(落ち着かない、眠れない)

 ベッドに横たわる雪は、布団の中で膝を摺り合わせた。

(おかしいな、なんで勝手にたってんだ
 こんなところで、こんな時に)

 ベッドを降りて一人でしてこようか、
 そんなことを考えながら、
 でもなんとなく起き上がる気にもなれず雪は寝返りをうつ。

 なぜだか仕方なくも同じベッドで、右隣で、
 早々に眠りに落ちた1号の姿が目に入った。

(俺だけ眠れないのは癪だ)

(・・・・・
 でも、いい顔して寝てるもんだな)

 相手が眠っていると思うと気が許して、雪は1号に近寄りその顔をつぶさに眺めた。
 規則的な静かな寝息が聞こえる。
 目の前にある肌が、やけにきれいに思えてくる。

(そういえば、さっきシャワー浴びたばかりだったか)

 落ち着かない自らの身体を少しばかり放っておきたい気持ちで、
 いや、その所為か、
 雪は1号の額に唇を落とした。

(なんとなく、感触が良さそうだと思ったら・・・
 本当にいいな)

 雪は素直に感心する。
 続けて、頬に移り唇を落とす。
 少し乾いたなめらかな感触がクセになったように、何度も触れる。

(もう少しくらい、大丈夫だよな)

 そう思いながら唇に触れ、当てたまま感触を味わっていると、不意に唇を湿された。

「っっ!」

 雪は慌てて身を離し、バツが悪そうに言う。

「1号、起きてたのか?!
 タチが悪いぞ」

「いや、気が付いたのは今さっきだ
 目の前でなにか気配がしたから」

「だからって舐めんな!」

「・・そうだな」

 あっさりとこたえられて、雪は気が削がれる思いがした。

(まだ寝ぼけてんのか?
 だったらいいや、早くまた寝ろよ)

 雪は都合の悪いことを無かったことにするかのように、
 布団を被りなおして寝る体制に入ろうとした。
 いや、入ろうとしたところで阻まれた。

「・・・・・っ、膝で押すな!!」

 向かい合わせ、間近にいる1号の膝が曲げられ、雪の両足の間に当てられている。

「かたくなってる」

「いちいちそんなこというな、わかってる!」

「雪、この所為で眠れないのか?」

「別にっ、構うな」

「ちょっ、勝手に触んな!」

「ちゃんと寝て、休んだ方がいい」

1号の手に芯をとらえられ、決して悪くない感覚に雪の意志が流される。

「そにれここは、
 そういう場所なんだろう?」

 1号の手が、寝間着の上から撫でるように動きだす。
 雪は否と言わなかったからには軽く腹を据え、それでも是と口にする気も起きないので口を噤むことにした。





 暫くの後、雪は寝間着も下着も取り払っていた。
 直接に1号の手が触れ、張りつめた形を1号の舌がなぞっても、雪はそれに任せていた。

 ただ、ゆっくりとだけれど確実に感覚が上がり、満ちてくる。

(すっげ、銜えられんのなんて・・・
 ぼーっとしてくる
 でも、そろそろマズイんじゃないか)

「うぅっ・・・・・・・・ハァ―――」

 頬を紅潮させて、雪は吐息混じりに口を開く。

「1号、もうそろそろ・・いいから離せ」

 1号は雪の言葉に反して、それまでより強くとらえた。

「1号っ? やめろって・・っ」

 雪は押し退けるように1号の頭に手を当てたが、
 それは形だけに終わった。
 1号は深く飲み込んだまま首を振って否と言い、
 きつく吸い上げる。

「っ、っ、もう
 出るっ・・・・・」

 足指を強張らせ、1号の髪を掴み、
 雪は果てた。




「やめろって、言ったのに・・・」

 1号はそれにはこたえなかった。

「まだ、元気だな」

「だからっ、どうしてそういうことをいちいち言うんだ!」

 確かに、一度果てたものの、力の衰えない様は雪と1号の目にも明らかだった。

「いれたいか?」

「は?」

 1号の言葉を、雪は即座には理解出来なかった。

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)

(・・・・・・・・・・・・・・・・)

(・・・・・・・・・・・・・)

(俺が、1号に?)

 1号は雪の両足の間から、黙って見上げてくる。

「・・・・・・・・ああ」

 十二分な沈黙の後に、雪はこたえた。
 1号は雪の腹部をチロと舐めて身を起こした。

(酔狂だな、理解したくもない)

(だけど、なんでだかこいつを目の前にしてみると、
 引き寄せられる・・・)

 1号は雪を押し倒し、仰向けに寝かせた。

「こんなこと、そんなに簡単に言っていいのか?」

 下衣を脱ぎ捨てた1号が、雪に跨る。

「雪となら、いいんだ」

「はあ?!」

「痛くたって」

(なんてことを、言い出すんだコイツは!)

 カッと、両耳まで熱が上がり、雪にはその音さえ聞こえた気がした。

「おまえ、おかしいんじゃないか?」

 1号の影に覆われ、そこに宛われたことがわかっても、
 雪は萎えることがなかった。

(不思議だな、萎える気配も無い
 俺もおかしいのか?)

 ベッドに投げ出された雪の手に、右手に1号の左手が、左手に右手が重ねられる。
 微かな震えを雪は感じ取り、その指を自らのそれと互い違いに組んで握った。

 深い息をつき、1号が腰を落とし始める。
 普段聞くことのない音が、身体の内外から耳に伝わってくる。

 1号の体内に飲み込まれていく、
 その光景を両の目が捉え脳が認識した途端
 瞼に焼き付き

 雪の過熱は止まらなくなった