REM - ! - pre - ジスナナホテル





その日はずっと二人でダンジョンを探索していた。
だいぶ疲労がたまってきた頃、日も暮れて、
ジスロフはナナに、ホテルで休もうと声を掛けた。
ナナも、「うん、そうしよう」と快く応えて
目的地のラブホテルに向かった。




チェックイン時、フロントでくじ引きをすすめられた。

「ナナ、ひいてごらん」

「うん…
 何か当たるかな?」

ナナが引いた三角くじを開くと、
小さな文字で「チュルホロ」と書かれていた。

「当たりですね
 どうぞ、これはお持ち帰り下さい」

ナナたちは手のひら大の袋を渡された。

「なんだろう、中身見えないね」

「当たりみたいだから、後で見てみよう」




個室に入って二人はまず汗を流すことにした。
ダンジョンでの疲れと埃っぽさを洗い流して
少しでも早くさっぱりしたい。

バスタブにお湯を満たしながら、
先ずナナがジスロフの背中を流した。

「ナナ、ありがとう
 今度はナナの番だ、ここにおいで」

ジスロフはお風呂椅子に座って、手招きする。
ナナはちょこんと、ジスロフの膝の上に座った。
たっぷりと泡立てて、スポンジで、手のひらで、
ジスロフはナナの身体を優しく洗っていく。

ナナの全身がくまなく泡だらけになった頃、
バスタブが丁度良い水位までお湯で満たされた。
それに気が付いたナナが立ち上がろうとした時、
ジスロフが背中から抱きしめて動きを阻んだ。

「ジスロフ…?」

「ナナ、まだ離れないでくれ」

抱き寄せられて、ナナはジスロフの意図に気付いた。

「ジスロフの、かたくなってるね
 おしりにあたってる」

「こんなにナナの近くにいるんだから、当然だ」

熱が触れているだけで、気持ち良さげにナナは身動ぐ。
浴室にこもる熱気の所為だけでなく、
二人の体温は瞬く間に、少しだけ、上昇し
白い肌に血の色が差し始めた。

「ナナ、入れたい……」

「うん、いい…よ……」




  ◇




キングサイズのダブルベッドの上で二人は仰向けに寝転がり
火照った体を冷ましていた。

「すごくのぼせたな」

まだ熱い吐息でジスロフが漏らす。

「だってそれは、
 ジスロフがお湯の中でもしたいって言うから…」

頬を赤らめるナナに、ジスロフは悪びれもせずにこたえた。

「俺の気持ちに応えてくれてありがとう、ナナ
 ああいうのも気持ちよかっただろう?」

ナナは耳までも赤くして、少し俯いてしまう。

「う、うん……
 でもそれより、ジスロフがよろこんでくれたから
 それがうれしいよ」

照れながら視線を動かした先で、
ナナはさっき受け取った包みを見付け、思い出した。

「ねぇ、ジスロフ
 さっきの開けてみていい?」

「ああ、何かもらったんだったな
 開けて見せてくれ」

「えっと…出てきた
 これは、チュルホロのお人形?」

チュルホロに付属するものを見て、
ジスロフにはそれが何かすぐに解った。

「ナナ、それはバイブだ」

「ええっ
 これ、大人のおもちゃなんだ…」

「ほら、チュルホロの背中からコードがのびているだろう
 その先にあるスイッチを入れてごらん」

「これかな、えいっ」

ベッドの上に転がっていた手のひらサイズのチュルホロがふるえ出す。

「わわ、このチュルホロプルプルしてる
 それに目が光ってるよー」

「なんだかかわいいね
 これはどうやって使うの?」

「普通のバイブと同じように
 身体の好きなところにあてると気持ち良くなったりするだろう」

「僕、これ使ってみたい!」

「いいよ、ナナを気持ち良くしてあげるよ、さぁ」

「ううん、あのね…
 僕がジスロフのことを気持ち良くしてあげたいの
 …ダメ?」

チュルホロを手に、小首を傾げて見上げてくるナナに、
ジスロフは感極まって一瞬息を詰まらせた。

「ダ、ダメじゃない!!
 ナナの好きなだけやってくれ
 思う存分、気が済むまで!!」

「ありがとう、ジスロフ」

ナナは優しく微笑んだ。

「じゃぁ、今から僕の言う通りにしてね」

「ああ、何でも言ってくれ」

「まずは、耳を少しずつ伸ばしてくれる?
 …もうちょっと……あ、それくらい」

「えっと、うんと」

ナナは伸ばしたピンクの両耳をジスロフの目の前で交差させて、
そのまま後ろに回してキュッと固結びした。

「耳は痛くない?」

「うん、全然痛くないよ
 でも、これじゃナナの顔が見えないよ」

「大丈夫だよ、今ジスロフのそばにいるのは僕だけだから」

「どうして目隠ししたんだい?」

「こうした方がね、気持ちいいかなって思って」

少し戸惑いを感じながら、ジスロフはナナの次の言葉を待った。

「今度は、うつ伏せになってくれる?」

ジスロフは慎重にベッドに身を沈めた。

「これでいいか?」

「うん、そんな感じで
 あとはゆっくりしててね、動かないでね」

スイッチを入れて、ナナはジスロフの肩にチュルホロを押し当てる。

「ハハ…ナナ、普通に気持ちが良いよ
 マッサージみたいだ」

「どんな感じなの?」

「じわじわしてるね」

「どこが気持ちいいかな…?」

探るように、ナナはチュルホロをジスロフの肌の上で滑らせる。
肩、首すじ、肩甲骨の周り、背骨の両脇を下方へ滑らせていったが
ジスロフはずっと穏やかな表情だった。

「あ、そこはなんか響く」

突然ジスロフが反応を変えた。
チュルホロは尾てい骨の辺りでふるえている。

「この辺り、良さそう?」

「下半身に響いて…そうだな
 なかなか良いよ、ナナ」

「なんだかうれしいな
 じゃぁ、この辺りをもっとしてあげるね」

ナナは手元のスイッチを切り替えた。
途端に強まった振動に、ジスロフはビクリと身を竦ませる。

「ちょ、ま、ナナ!」

「チュルホロが激しく暴れてるー
 すごいねー」

ナナは更にチュルホロを移動させ、ジスロフの足の隙間に滑り込ませる。

「ナナ、そこは無理! 入らない!
 やめ!!!!」

やめてくれ、そう言いかけてジスロフは言葉を飲み込んだ。
さっきナナに行った言葉を思い出したのだ。
ナナが自分のためにしてくれることだったら何でも受け入れると。

「ここはイヤなんだね、わかった
 じゃぁ、別のところにするね」

ナナはジスロフの気持ちを察して、チュルホロを移動させた。
ジスロフの嫌がった場所を避けて、その前へ。

「ナナ、そんな直に!」

男性の一番感度の高い部分に、微かな期待を抱いていた部分への刺激に
ジスロフの声に喜色が混じった。

ナナの小さな手のひらと、ジスロフの下腹に挟まれ
チュルホロが暴れ続ける。
ナナの指の隙間から、チュルホロの光る目がちらちらと見える。

「ナナ、そんなに刺激し続けたら…
 もたない、ナナ、ナナ」

「ジスロフ、右側を下に転がって…そう」

ナナの手に促され、ジスロフは腹部が浮くように身を傾けた。
ベッドとの間に出来た隙間に、ナナが入り込んだ。

「ナナ、来てくれたんだね
 抱きしめていいか」

ジスロフは手探りでナナの両肩を見付け、手のひらに包んだ。

「ジスロフがすごく気持ち良さそうにしてくれてて
 うれしくて……
 あとちょっと、うらやましくて
 僕もね、一緒にしたくなっちゃった」

ナナはジスロフの腕の中で、
ジスロフはナナと一緒にチュルホロを挟んで、
二人はそれぞれに、より快感を得られる場所を求めるように、
そして一度合わせた肌が離れないように、
身を捩らせ、体温を上げて…


「ナナ、ナナー、アーーッ……」




  ◇




「いつの間にかこんなに巧くなって…」

「それはジスロフの所為だよ」

「俺、そんなにナナに色々教えたか」

「違うよ
 ジスロフが満たされて欲しいって
 そう思っただけ」

「ナナ…ありがとう」




夜はなかなか終わらない。
どんな夜を過ごしても、翌朝には力が満たされる。
ここは不思議なホテル。