後に雪と1号が二人になった時に。
「雪……思い出してしまったんだ、あれを……」
「なんだよ」
「母さんの、あれ……雪もよく使ってただろう」
「あれ……あれ……――っと、あれか……」
「そう、春画……本人に会ったらあまりにそっくりで、こう……」
「さっきおまえが赤くなってたのって、もしかして」
「どきどきした……」
「おまえなー……確かに散々お世話になったけど、
……恥ずかしくなるだろ、自重しろ」
「オレ、母さんの顔を知らなくて、
春画のあれは同じ名前だけど母さんなのか
ただ同じ名前の別の人なのかわからなかったんだ」
「まぁ……追求もしづらいわな」
「あらためて母さんだったんだなって思うと……複雑だ」
「罪悪感でも感じるか?」
「いや、不思議と感じない」
「1号、おまえの感覚って時々面白いな……」
1号は雪の瞳をまじまじと見つめる。
「何か言いたいのか?」
「いや、いい……」
雪は兄とのことを言われているのかと思ったり思わなかったり。
「むしろ、ありがたいという感じだ。
後世に残るほど魅力的だったということなのかも知れないし」
1号は話を戻す。
「色気あったよな、紗智。流石は人妻……っと」
雪は慌てて口を噤む。
「気にするな、雪らしくも無い。……オレだってそう感じたんだから……」
「俺たち、何に毒されたんだろうな……」
雪と1号は苦笑いする。
「……さぁな」
その後、二人はシキを探すために紗智と別れた。
雪曰く「兄さんを助けるのを手伝うって言っただろ、あれ、まだ有効だからな」
◇
『紗智に手を出すのは止めとけよ……』と言おうと思いつつも言えない雪だったよ
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