シキの耳朶への愛撫をしている間に、何度かサングラスのテンプルに雪の舌が触れた。
味のしないそれはシキの体温が移っていて、愛おしくなった。
元よりシキの魅力を引き立てるものだが、今のように触れ合っている時には邪魔に思うこともある。
なんとか退けようと試みては失敗しているのだが、今日はそんな気も起きなかった。
シキの肌に触れるのと同じようにそっとテンプルを唇で撫で、触れさせたままゆっくりと耳から遠ざかって行く。
リムに至って顔を離し、縁に添って指を滑らせた。
硬質な感触に、まるで眼窩の縁を撫でているような気分になる。
雪は指先でゆるゆると楕円に近い形を何周もするうちに、思わず小さな笑みが零れた。
「今日はサングラスを触られても嫌がらないんだね」
指の動きを止めて暫く待つと、雪と視線を合わせるようにシキは顔を上げた。
「……無理に外そうという気は、今は無いんだろう?」
「わかってくれるんだ……うれしいよ、兄さん」
「わかるさ……」
こうして察してくれるのに、何故自分の一番の願いには応えてくれないんだろう。
雪は嬉しさの中で、恨めしさにも似た気持ちを抱いた。
REM - !