「雪、おんぶ!」

「おぶっ」

 1号の背後からのアタックに雪は潰れる。

「何がおんぶだ、てめえで歩け! 大の男がまったく……」

「前はずっと乗せてくれてたじゃないか」

「あん時はあん時だ、今は人間に戻ってんだから馬と一緒に考えるな」

 通り掛かったベガが声を掛ける。

「私がおぶってやろうか?」

 誘いに1号が応じると、ベガは黙々と背負って歩き出した。
 その後ろ姿を見て雪は思う。

(ベガ、かっこいいな……)





 後日。
 背後から飛び掛かろうとした1号に、雪は膝をつき背を向ける。

「来い」

「今日は乗ってもいいのか?」

「ああ、ベガに負けてらんねえ」

 雪は1号を背負って立ち上がる。

「う……重てえ……ベガはなんで背負いたがるんだ」

「好きだからじゃないか?」

「え?」

「体を鍛えるのが」

「あ、ああ、そうだよな。
 あれは鍛練つうか修業っつうか、ストイックなやつだよな」

「……オレはやっぱり雪の背中が一番落ち着く」

「そ……そうか」





 また後日。
 1号を肩車するベガの姿を目撃し、雪は更なる憧れと負けん気を抱いたらしい。










REM - !