月に墜落した雪と1号が必死の探索をしていた頃のお話。
 人類が月に降り立ってから環境が改善され生き物が住める星になったとはいえ、まだまだ苛酷な環境であることに変わりはない。
 陽のあるうちは凶暴な太陽風にさらされ、夜となれば恐ろしく気温が下がる。
 元々低体温気味だった雪は、ある晩体調を崩して更に体温が下がり寒気に体を震わせた。
 そんな雪に1号はその日の分のなけなしの食料を与えようとする。

「食べれば体温が上がる、オレはしばらく食べなくたって持つんだ、
 雪が食べろ」

 焚き火で炙った食材全部を目の前に置かれ、雪は拒絶する。

「俺のことなんか構うな、てめえの心配でもしてろ」

「おまえのためじゃない、おまえが倒れたらオレが困るんだ」

 1号は淡々と言い、沸かした湯で喉を湿す。
 雪はそちらに顔を向けたまま、視線だけそらす。
 1号の言い分は彼の利己のためであり、同時にそれは雪を助け1号に負荷を掛ける。
 それを分かった上で雪は結局全てを食べた。










REM - !