まだ雪が就学前の幼かった頃のこと。
その日、雪はシキに手を引かれて彼の研究室の前を通った。
そのとき初めて1号の姿を目にして、そちらを指差して兄に問うた。
「にいさん、あのひとはだれ?」
雪の声にシキも足を止める。
「あれは人間ではない、怪生物だ」
「みずのなかにいるよ、だいじょうぶなの?」
「酸素は供給されている、呼吸に問題はない」
「なまえはあるの?」
「リンカーネーション因子体1号だ」
「…いちごう?」
「それでいい」
「いちごう、かみのいろがぼくのすきなあいすとおんなじ」
嬉しそうに雪は言った。
ピンクの髪を見て、好物のゆきみだいふくの時々販売される苺味を思い出したらしい。
「にいさん、あいす、あいすがたべたくなってきた」
「家に帰ってからな」
「はーい」
「えーと…いちごう!」
別の日、また雪は水槽を指差して言った。
「ずっとここにいるの?」
「そうだ、研究は私が担当している」
「ねえ、ほんとににんげんじゃないの?」
「お前はコールドシリーズは知らなかったか?」
「しらない」
「そうか、この国の研究では…
いや、母さんが開発した人型の怪生物があってな
1号にはそこで培われた技術の一部が使われいている」
「ひとにしかみえないよ、ほかのとぜんぜんちがうよ」
「これでも怪生物だ、身体能力は並みの人間をはるかに上回る
雪もいずれ他の人型怪生物を見ることがあるだろう」
「かあさんもにいさんもすごいんだね!」
雪は目を輝かせて兄に尊敬の眼差しを向けた。
REM - !