ある晴れた日の夜、寝床へ向かおうとした雪は1号に呼び止められた。
「今夜は星を眺めて過ごそう」
砂浜に二人で寝転がって夜空を見上げる。降り注ぐような満天の星空だ。
「1号、おまえ天文や星座は分かるか?」
「いや、オレはあまり詳しくない」
「俺もまぁまぁだ。
チュルホロ星系や地球、月から見える恒星や星座は覚えてるけど、
こっから見える星空にはそれらしい物が見当たらねえんだよな……」
「そうか……オレ達は大分離れた星に来てしまったんだな」
「どれぐらい離れてるかは分かんねえぜ、
隣の星系かも知れないし、何億光年離れているかも知れない。
……あーあ、もっと真面目に天文、宇宙を勉強しとくんだったぜ。
そしたら今の居場所の検討もつけられた……かも知れねえ」
「雪の家族や……あとはそうだ、ベガなら分かりそうだな」
「アイツは宇宙飛行士だったんだよな」
「懐かしいな………」
「会いたいか?」
「ああ、雪だってそうだろう?」
「どっかで無事でいてくれたらいいさ……」
「星座か……この星空にもきっといくつも名付けられた物があるんだろうな。
…………あ、あれ! 蛇使い座じゃないか?! 前に雪が教えてくれたやつ」
「うん? どこだ?」
「ほら、あの赤い星を先頭にジグザグしたところ」
「う……ん、ああ、あれか。惜しいな、似てるけど違う、星の数が足りない」
「違ったか……」
「落胆すんな、今更だ」
「うん……仕方ないか。折角だからオレはあれを蛇使い座と呼ぶことにする。
他に何かの形に見えそうな星は無いかな……」
1号は想像を膨らませながら熱心に無数の星々を見上げて、指で何やら空中に線を描き出した。
「フッ……楽しそうだな、好きにしてろ。
……ま、今どこの星にいるか分かったところで、
ここで俺達二人じゃ宇宙船は造れねえし」
「確かに宇宙船は無理そうだな、でも海がある。目指すのはあっちだ」
1号は波打際を指差して見せる。
「船ならこの島でも資材を集めて作れる。ここ以外の陸地を見付けたいよな。
航行計画、必要な物資の準備、どこに向かうか、どのタイミングで引き返すか。
雪はそういうのは得意だろう?」
「得意って程でもねえけど、まぁ、なんとかやれる」
「雪は色々知っていて頼もしいな」
「おまえとは得意分野が違うんだよ。
……先ずはおまえが乗っても沈まない船造りからだな」
「設計は頼む。力仕事は任せろ」
「ハハッ、そりゃいいや」
明日も頑張ろう
早く故郷に帰りたい――
それぞれの思いを胸に星空を見上げ、静かに時が流れて行く。
「ここがどこかは分からないけど……星空はきれいだな」
「ああ、晴れた日の夜は最高だ」
「雪と一緒に見ることが出来て、良かった……」
1号は波の音に紛れるような小さな声で呟いた。
雪の頭上でザッ…と砂が擦れる音がする。
1号が体を起こし、雪の傍に膝を着いて顔を覗き込んでくる。星の光が1号の影に隠れた。
「ん……もう戻るか?」
1号は答えず、雪と唇を重ねた。
「!!」
雪は一瞬目を見開き…………
そっと閉じるともう一度1号とキスをした。
「さ、戻ろう」
1号が手を差し伸べる。
雪はその手を取って、ぐっと引っ張られながら立ち上がった。
握り返された手はそのままに、すぐ近くの拠点――現在の棲家まで二人で歩いて帰った。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
『ぢきゅうぢそく』より、イベントメッセージ
【♪】雪と一緒に夜遅くまで星を見ました。
蛇使い座を見ながらキスしました。
REM - ! - pre
蛇足(反転)
・蛇使い座
1号視点だったら、
「雪の得意技(スネイク)そっくりだ」とか
「星座の蛇の頭が雪の眼の色と同じだ」とか言ってくれそう……いや、言ってくれたらイイナーと思いまいた
・いつ雪が1号に教えたの?
RSでの旅の途中かもしれないし、或いは
昔エデン科学研究所で二人が遊んでいた時に(ラブショ的妄想)、雪が図鑑を広げて
「これ、『蛇使い座』っていうんだ、蛇の形が格好いいだろう!!」
って目を輝かせて、そしてちょっと自慢気に教えるのです……あ、そういう光景を想像したらほんわかしてきました
・関連作品 →
ぢきゅうコミュニケーションpre (コミュニケーションイベント1〜3)