[#このタグ見たヤツは今すぐ推しカプのキスシーンを資料なしで描け]





 右脚を抱え上げられて、自然に背が後ろに倒れる。
 左の腿の上にはやんわりと抑えつけるように手が置かれ、抱えられた膝の裏に、雪が潜りこむように鼻先を埋める。
 そのまま頬を滑らせ、少し上の辺り、腿の内側に歯が立てられた。
 ごく軽く、痛くはない。

 雪とくっついて楽しみたくなって、絡んだのはオレだけれど………

「どうしてそんなところを噛むんだ?」

 雪はこちらに視線を寄越して、呆れたような顔をする。

「噛んでんじゃねえよ、キスだ」

「? ここじゃないのか?」

 自分の口元を指差して問う。

「どこにしたっていいんだよ」

「どこでも? 足でも……?」

「そう、膝なんかは顔を近付けやすいからやりやすいだろ」

 膝頭に唇が落とされる。

「こっから上に行っても……」

 左脚を抑えていた右手を離し、膝から腿を辿って足の付根まで指先をすべらせる。

「下へ行っても……」

 今度はふくらはぎをすっと撫でて、踝に指が絡められる。

「どっちがいい?」

 オレの膝に顎をのせたまま、愉快そうに聞いてくる。

「どっちって言われても、よく分からないな…………どっちも」

「……いいぜ」

 膝から始まり、腿の上を転々として、更に足を持ち上げられて足首から甲に至るまで。
 続いて左脚にも同じように。

 やわらかくて少し温かいものが触れるだけだ。
 時々舌が触れたり唇で強めに挟まれたりするが、口にしてくれた方がずっと気持ちいいのに。

 最初はそう思っていたが、時間を掛けて何度も何度も、くまなく触れられているうちに、ていねいに扱われている気がしてじわじわと嬉しくなってきた。
 体よりも、心や頭に効いてくる。

 オレがしようとしていた、いつも雪として味わうような強い刺激は全く無い。
 穏やか過ぎるが、今はまだ少し物足りなく感じるが、こういった事に関して、雪の言うことを聞いて良い思いをしなかったためしが無い。

 気にかかることはある。

「雪は、そうしていて楽しいのか?」

 顔を上げて、また呆れ顔だ。

「したくもねーこと、わざわざ好き好んでやるかっての!
 おまえはどうなんだ?」

「……雪に任せたい」

 こちらの顔をじっと見て、雪は小さく笑った。

「ま、悪かないってか」

 そうなんだ、全然悪くなんかない。続けたい。
 けれどなんと言ったらいいのかわからない。

「さっき、どこでもいいって言ったよな。
 脚だけじゃなく、他の場所でもいいのか?」

「他んとこにもしろって?」

「ああ」

「どこだ」

 やはりどうしたらいいのかよく分からない。
 もしかしたら、まだされていない場所に何かがあるかもしれない。
 そんな興味が湧いてきていた。

「全部?」

「全身? そりゃあ時間がかかりそうだな」

 雪は体を起こして乗り上げてきた。
 オレの腹に手をついて見下ろしながら言い放つ。

「1号、途中で寝たら叩き起こす!」

 どうだろう。そんなことってあるだろうか。
 でも、心地よく、意識がぼやけてしまいそうな気配もあった。
 もっとぼやけていってしまうのか、眠れないほど良いことが起きるのか……楽しみだ。










REM - !