ある晩。
 1号は食後に工作に取り掛かり、集中しているうちに随分と夜が更けていた。

 そろそろ休むかと部屋に戻ると、彼のベッドには雪が寝ていた。
 壁の方を向いていて、顔は見えない。
 様子を見ていたが、動かない。
 もう眠っているのだろうか。
 1号も空いている場所に横になった。

 目を瞑って、しばらくして。

「遅かったな」

 振り返らずに雪が呟く。

「起きてたのか。今日は自分のベッドで寝ないのか?」

「……暖を取ろうと思っただけだ」

「そうか……前より少し体温が下がって、寒いのか?」

「何の話だ。前っていつだよ」

「馬の時」

「ああ……今より高かったのか」

「うん。それとも風邪でもひいて寒気がするのか?」

「ひいてねえよ」

「よかった。オレは寒くても平気だけど、
 雪が先に布団に入っていてくれたから温かくていいな」

「フン……おまえの体は冷てぇよ。
 今夜はかなり冷えただろ、暖房くらい使えっての」

「気にしてなかった。そのうち温まるだろうから我慢してくれ」

 それきり雪は黙ってしまった。
 1号も再び瞼を閉じる。

 布団の中で体の芯から指先まで温まっていくのを感じ、まどろむ1号の耳に、「おやすみ」と小さな声が聞こえた。





 翌朝、外は一面の雪景色になっていた。










REM - !